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社長のための週イチ経営メモ/店長さん、あなたはバイトリーダーですか?

現場を回す人と、店を育てる人の違い

今回は、少し長くなります。

店舗型のサービス業における「店長の仕事」について、全体を見渡す形で書いてみました。

店長という仕事は、誰よりも現場を支えながら、誰にも弱音を吐けない立場です。

現場を回す人と、店を育てる人の違い

売上を見なければならない。
人件費も見なければならない。
シフトも埋めなければならない。
お客様対応もしなければならない。
スタッフさんのことも見なければならない。

それでも、店長だから。

そんなふうに、毎日なんとか現場を支えている方も多いのではないでしょうか。

だからこそ、最初に一つだけ、少しきつい問いを置きます。

店長さん、あなたはバイトリーダーですか。

飲食店、カラオケ店、小売店、美容サロン、フィットネス、スクールなど、人が現場でお客様と向き合う仕事では、「店長」という役割はとても大きな意味を持ちます。

ただ、現場を見ていると、店長という肩書はあるのに、実際には「現場作業ができる人」「シフトを埋める人」「本部やマネージャー、社長の指示を流す人」に近くなっている場面もあります。

もちろん、店長個人を責めたいわけではありません。

むしろ、多くの店長は、毎日かなり頑張っていると思います。

頑張っていないわけではない。
手を抜いているわけでもない。
むしろ、目の前の現場に真剣に向き合っている。

ただ、もしかすると、見る場所が少し違っているのかもしれません。

今回は、店長を責めるために書いたものではありません。
店長という仕事を、もう一度そっと見直してみるために書いています。

そして、経営者の方にも一緒に考えていただきたい問いです。

あなたの会社は、店長をきちんと「店長」にしているでしょうか。

バイトリーダーと店長は何が違うのか

バイトリーダーは、現場を回す人です。

フロントに立つ。
レジを打つ。
お客様を案内する。
清掃を指示する。
新人に作業を教える。
その日の営業を成立させる。

これは、とても大切な仕事です。

現場を回せる人がいなければ、お店はその日一日すらまともに動きません。

だから、バイトリーダーの役割を軽く見ることはできません。

ただ、そこで少し考えてみたいのです。

その仕事は、必ずしも店長がやる必要はあるでしょうか。

その仕事を、店長さん自身が抱え込んでしまっていませんか。

優秀なアルバイトリーダーに任せられるかもしれません。
長く働いているスタッフさんでもできるかもしれません。
現場作業に慣れた社員さんでもできるかもしれません。

では、そのとき店長さんは、何を見るのでしょうか。

今のお店の状態は、どうなっていますか。

店長がいなければ、現場が回らない状態でしょうか。
できるスタッフさんに、負荷が寄りすぎていないでしょうか。
新人が入っても、育つ前にこぼれてしまっていないでしょうか。
店長自身が、売上や人を育てることよりも、目の前の作業に追われ続けていないでしょうか。

そう考えると、バイトリーダーと店長の違いは、少し見えやすくなるかもしれません。

バイトリーダーは、現場を回す人。
店長は、売上と人が育つ現場を作る人。

ここに、大きな違いがあると思うのです。

店長は、単にその日を無事に終わらせる人ではありません。
店長は、その店が明日も、来月も、来年も、少しずつ良くなっていく状態を整える人です。

ここが、店長であるあなたが、一番力を入れる場所ではないでしょうか。

現場を回すことは大切です。
でも、回すだけで止まってしまうと、店は育ちにくくなります。

店長の仕事は、店を回しながら、店が育つ流れを整えること。

ここではないでしょうか。

店長の仕事は、大きく分けて考えてみませんか。

店長の仕事は、細かく見ればたくさんありますよね。

売上管理。
人件費管理。
シフト作成。
発注。
清掃管理。
業者対応。
クレーム対応。
新人教育。
本部報告。
スタッフ面談。

たしかに、どれも必要な仕事です。

ただ、これらを並べるだけでは、店長の仕事の本質は見えにくいかもしれません。

では、少し見る場所を変えてみます。

店長の仕事は、次の6つに分けることはできませんか。

1. 売上を作ること

お店は、売上がなければ続きません。

これは、きれいごとではありません。

どれだけ良い想いがあっても、どれだけスタッフさん思いでも、売上がなければ雇用も守れません。
家賃も払えません。
給料も払えません。
お店は続きません。

だから、店長の仕事の一つ目は、売上を作ることです。

ただし、売上を作るとは、単に売上表を見ることではありません。

「今月、売上が悪いです」
「前年を割っています」
「人件費が高いです」

これだけで止まってしまうと、報告で終わってしまいます。

店長が見るべきなのは、その数字の裏側です。

なぜ客数が減ったのか。
なぜリピートが少ないのか。
なぜ客単価が上がらないのか。
どの時間帯が弱いのか。
どのお客様が戻ってきていないのか。
現場の空気はどうなっているのか。
スタッフさんの声かけは機能しているのか。

売上は、本部に提出するためだけの数字ではありません。

売上は、お客様がその店に価値を感じて、お金を払ってくださった結果です。

店長が売上を見るということは、お客様が何に価値を感じ、何に小さな違和感を持ち、なぜまた来たいと思うのかを汲み取ることでもあります。

数字を見ているだけで、止まっていませんか。

数字を読んでいますか。

その数字の奥にある、お客様の動き。
スタッフさんの動き。
現場の空気。
声になっていない反応。

そこまで見ようとするところから、売上づくりは始まるのだと思います。

2. 人を育てること

店長の仕事の二つ目は、人を育てることです。

店長が自分で全部できる。
店長が一番早い。
店長が一番正確。
店長がいないと店が回らない。

一見すると、頼れる店長に見えるかもしれません。

でも、それだけで止まってしまうと、少し危ういのです。

店長が全部やっている店は、店長の体力以上には伸びません。

店長が休めない。
新人が育たない。
できるスタッフさんにばかり負荷が寄る。
現場が店長依存になる。

これでは、店は育ちにくくなりませんか。

人を育てるとは、作業を教えることだけではありません。

なぜそれをするのか。
何を見て判断するのか。
困ったとき、どこに戻ればいいのか。
お客様にどう向き合うのか。
スタッフさん同士でどう助け合うのか。

ここまで渡していくことです。

教える立場と教わる立場は、上下ではありません。

ただ、その場所に先に立ったか、後から来たかの違いです。

先に立った人には、後から来る人が同じ場所でつまずかないように、道を見せる役割があります。

できない人を笑うためではありません。
できるようになるまで、迷わせないためです。

そこに、育てるという仕事があるのだと思います。

3. スタッフを守ること

サービス業で一番大切なのは、お客様かもしれません。

でも、一番守らなければいけないのはスタッフさんです。

これは、お客様を軽く見るという意味ではありません。

お客様を大切にするためにこそ、スタッフさんを守る必要があるということです。

疲弊したスタッフさん。
怖がっているスタッフさん。
理不尽なクレームにさらされているスタッフさん。
相談しても守ってもらえないと感じているスタッフさん。

その状態で、良いサービスを提供し続けるのは、やはり難しいと思うのです。

店長は、スタッフさんが安心してお客様に向き合える状態を作る人です。

お客様から厳しいご指摘をいただいたとき、まず事実確認は必要です。
スタッフさんにミスがあれば、後で教育する必要もあります。

でも、お客様の前でスタッフさんを差し出すこととは違います。

怒鳴られる。
人格を否定される。
無理な要求を押し通される。
セクハラまがいの言動を受ける。
他のお客様にも迷惑がかかる。

そのような場面で、店長が前に出られるか。

ここに、現場責任者としての姿勢が出ます。

お客様を大切にすること。
スタッフさんを守ること。

この二つは、対立するものではありません。

むしろ、スタッフさんを守れないお店は、お客様に良い時間を届け続けることも難しくなります。

4. オペレーションを整えること

もちろん、現場作業も大切です。

フロント。
レジ。
案内。
会計。
清掃。
発注。
予約管理。
締め作業。
業者対応。

これらが崩れると、お店は回りません。

ただし、ここを少し見直してみてもいいのではないでしょうか。

店長の仕事は、店長自身が一番上手にフロントを回すことではありません。
店長自身が一番速くレジを打つことでもありません。
店長自身が業者対応をすることが本質でもありません。

店長の仕事は、誰が入っても一定水準で回る状態を作ることです。

作業を自分が抱えるのではなく、作業が回る仕組みを整える。
新人でも迷わない流れを作る。
ミスが起きにくい配置にする。
忙しいときに誰が何を見るのかを決める。

これが、店長としてのオペレーション管理です。

自分ができることと、人ができる状態を作ることは違います。

「自分でやったほうが早い」

現場では、そう感じる場面がたくさんあります。

そして残念なことに、それは真実だったりしますよね。

店長が自分でやった方が早い。
店長が自分でやった方が丁寧。
店長が自分でやった方が、お客様対応も安定する。

そういう場面は、実際にあると思います。

でも、だからこそ、そこで店長が抱え続けてしまうと、人は育ちにくくなりませんか。

今は自分でやった方が早いかもしれません。

でも、そのままでは、いつまでも店長が一番早いままです。
いつまでも店長が一番丁寧なままです。
いつまでも店長がいないと不安な現場のままです。

だからこそ、「自分よりも早いかもしれない」「自分よりも丁寧かもしれない」スタッフさんを育てる必要があります。

店長が整えるべきなのは、自分が動きやすい現場ではありません。
スタッフさんが迷わず動ける現場です。

5. 優先順位を決めること

ここからが、マネジメントです。

現場では、すべてを同時に完璧にはできません。

売上も大事。
お客様対応も大事。
スタッフ教育も大事。
清掃も大事。
本部やマネージャー、社長からの指示も大事。
人件費も大事。
新人のフォローも大事。

でも、いまこの瞬間に、何を一番守るのか。

それを決めるのが責任者の仕事です。

たとえば、金曜日の夜。
お客様が増える時間帯。
当日欠勤が出ている。
さらに、新人が初めて勤務する日。

このような日には、店長の仕事がはっきり出ます。

どこが詰まりそうか。
誰に負荷が寄りそうか。
新人を誰が見るのか。
店長自身はどこに立つべきか。
マネージャーが来ているなら、何を一緒に見るべきか。

こういう状況で何も動きが変わらないなら、現場の小さな違和感に気づけていないのかもしれません。

責任者の価値は、平常時よりも、イレギュラーが起きた日に出ます。

人が足りない日。
新人がいる日。
混雑する日。
お客様対応が難しい日。

そこで何を見るか。
誰を守るか。
何を捨てて、何を優先するか。

それが店長の判断です。

いつも通りではない日ほど、店長の仕事は見えやすくなります。

6. 会社の方針を現場の言葉に翻訳すること

チェーン店や多店舗展開の会社では、本部からさまざまな指示が降りてきます。

キャンペーン。
人件費管理。
衛生管理。
新しいオペレーション。
売上目標。
クレーム対応方針。
採用方針。
接客方針。

中小企業であれば、本部ではなく、マネージャーや社長から直接方針が伝えられることもあると思います。

店長の仕事は、それをただ伝えることではありません。

「本部やマネージャー、社長が言っているからやって」

これだけでは、スタッフさんの行動が止まることがあります。

なぜやるのかが分からない。
何を変えればいいのかが分からない。
お客様にどう伝えればいいのかが分からない。

その小さな迷いが、現場の動きを止めてしまうのです。

店長は、本部やマネージャー、社長の言葉を、現場の言葉に翻訳する人です。

なぜこれをやるのか。
今日から何を変えればいいのか。
お客様にとってどんな意味があるのか。
スタッフさんにとって何を気をつければいいのか。

ここまで伝える必要があります。

店長は、本部や社長のスピーカーではありません。
現場への翻訳者であり、アテンドする人です。

本部やマネージャー、社長の想いを、現場で迷わず動ける言葉に整える。

それも、店長の仕事だと思います。

店長は、どの順番で覚えればいいのか

とはいえ、いきなり全部できる店長はいません。

最初から売上も作れて、人も育てられて、スタッフさんも守れて、優先順位も決められて、本部やマネージャー、社長の方針も翻訳できる。

そんな人は多くありません。

だから、順番があります。

まずは、現場作業を覚えることです。

フロント、レジ、接客、清掃、締め作業、業者対応。
ここを知らないまま、現場に指示は出せません。

スタッフさんに指示を出すにしても、「自分でできる人」から言われるのと、「自分ではできない人」から言われるのでは、受け手の感覚が大きく異なってしまいます。

もちろん、店長がすべての作業を一番上手にできる必要はありません。

ただ、現場で何が起きているのか。
どこで詰まりやすいのか。
どの作業に負荷がかかるのか。
新人がどこで迷いやすいのか。

そこを知らないまま指示だけを出してしまうと、スタッフさんには「現場を見ていない指示」に聞こえてしまうことがあります。

だから、まずは現場作業を覚える。

これは、店長が作業者になるためではありません。
スタッフさんに、現場を分かったうえで言葉を届けるためです。

次に、売上を見ることです。

売上が良い、悪いで終わらせず、数字の背景を見る。
客数、客単価、時間帯、リピート、客層、スタッフさんの動き。
売上が生まれる理由を見ることです。

ここでも、数字を見るだけで終わらせないことが大切です。

数字を読んでいますか。

その数字の奥にある、お客様の動きや、現場の小さな違和感まで汲み取ろうとしているでしょうか。

売上は、現場から離れた数字ではありません。
現場の結果が、数字になって表れているものです。

次に、人を育てることです。

ここは、かなり大切な分岐点だと思います。

現場作業を覚えることは、店長にとって必要です。
自分でできないことを、スタッフさんに任せるのは難しいからです。

ただし、現場作業ができるようになったあとに、そこで止まってしまうことがあります。

自分でやったほうが早い。
自分でやったほうが正確。
自分でやったほうが安心。

そう感じる場面は、現場ではたくさんあります。

そして残念なことに、それは真実だったりしますよね。

店長が自分でやった方が早い。
店長が自分でやった方が丁寧。
店長が自分でやった方が、お客様対応も安定する。

そういう場面は、実際にあると思います。

でも、だからこそ、そこで店長が抱え続けてしまうと、人は育ちにくくなりませんか。

今は自分でやった方が早いかもしれません。

でも、そのままでは、いつまでも店長が一番早いままです。
いつまでも店長が一番丁寧なままです。
いつまでも店長がいないと不安な現場のままです。

だからこそ、「自分よりも早いかもしれない」「自分よりも丁寧かもしれない」スタッフさんを育てる必要があります。

新人に作業を教える。
できるスタッフさんに役割を渡す。
できないスタッフさんのつまずきを見る。
自分でやった方が早いことを、あえて人に任せる。

これは、単に仕事を振るという話ではありません。

店長が、自分の手から少しずつ現場を離していくことです。
そして、スタッフさんが自分で考え、動ける場所を作っていくことです。

ここで初めて、店長は「現場を回す人」から「現場を育てる人」に変わっていきます。

だから、人を育てることは、店長にとってかなり重要なポイントです。

売上を見る。
現場作業を覚える。
そして、人を育てる。

この順番を越えたところに、店長の仕事が少しずつ見えてくるのだと思います。

次に、優先順位を決めることです。

今、この場面で、何を一番守るのか。
お客様対応か。
新人フォローか。
スタッフさんの安全か。
売上か。
現場の流れか。

責任者は、その都度判断する必要があります。



次に、任せることです。

実は、一番しんどい仕事がこれかもしれません。

任せるとは、丸投げではありません。

目的を伝える。
基準を伝える。
任せる。
見守る。
失敗したら一緒に振り返る。

ここまでが、任せるということです。

自分でやったほうが早い。
自分でやったほうが安心。
自分でやったほうがミスも少ない。

現場では、そう感じる場面がたくさんあります。

でも、店長がずっと自分で抱えてしまうと、スタッフさんは育ちません。
任せてもらえないスタッフさんは、自分で考える機会を失ってしまいます。

一方で、任せる側も怖いのです。

失敗されたらどうしよう。
お客様に迷惑がかかったらどうしよう。
あとで自分が責任を取ることになるかもしれない。

そう考えると、つい自分でやってしまう。

だから、任せることは、店長にとってかなりしんどい仕事です。

それでも、任せなければ人は育ちません。
人が育たなければ、店長はいつまでも現場を抱え続けることになります。

任せることは、手を放すことではありません。
スタッフさんが迷わず動けるように、目的と基準を渡して、そばで見守ることです。

ここを越えたときに、店長は少しずつ「自分が回す人」から「人が動ける現場を整える人」に変わっていくのだと思います。

最後に、責任を取ることです。

任せた仕事でスタッフさんが失敗した。
新人がミスをした。
クレームが起きた。
売上が落ちた。

そのときに、

「あのスタッフが悪い」
「新人が弱い」
「お客様が変だった」
「本部や社長の指示が悪い」

で終わってしまうと、そこで学びが止まります。

自分の現場で起きたことを、まず自分の問いとして引き受ける。

それが、店長の責任ではないでしょうか。

給料は誰からいただいているのか

店長に、ぜひ考えてほしい問いがあります。

給料は誰からいただいているのでしょうか。

表面的には、会社から振り込まれています。
給与明細にも会社名が書いてあります。

でも、その原資は、お客様が払ってくださった売上です。

お客様が来店する。
価値を感じてお金を払ってくださる。
売上になる。
そこから家賃、人件費、仕入れ、設備、広告費、税金などが支払われる。
その一部が、スタッフさんや店長の給料になります。

だから、店長は上司だけを見ていてはいけません。
本部だけを見ていてはいけません。
社内ルールだけを見ていても足りません。

お客様を見る。
スタッフさんを見る。
店を見る。

売上は、上司に報告するためだけの数字ではありません。

お客様がこの店に価値を感じてくださった結果です。

だからこそ、お客様を大切にする必要があります。

ただし、お客様が給料の原資を作ってくださるからといって、お客様のすべてを受け入れるという意味ではありません。

お客様は大切です。
でも、スタッフさんの尊厳や安全まで買っているわけではありません。

お客様を大切にすることと、スタッフさんを差し出すことは違います。

ここを判断するのも、店長の仕事です。

お客様を大切にする。
スタッフさんも守る。

その両方を整えることが、店長の大切な役割です。

店長を責めるだけでは、何も変わらない

ここまで読んで、苦しくなった店長もいるかもしれません。

「そんなことは分かっている」
「でも、時間がない」
「人が足りない」
「本部は数字しか見ない」
「育成しろと言われても、現場を回すだけで精一杯」
「自分も、店長らしい仕事ができていないことは分かっている」

そう感じる店長もいると思います。

苦しくなった店長さんは、自信をもってください。

それだけ、真剣に毎日現場に向き合っている証拠だと思います。

苦しくなるのは、見えているからです。
本当はもっと良くしたいと思っているからです。
スタッフさんを育てたい。
お客様にもきちんと向き合いたい。
売上も作りたい。
でも、目の前の現場を回すだけで精一杯になってしまう。

そのしんどさは、店長としての責任感があるからこそ生まれるものかもしれません。

だから、店長だけを責めるのは違います。

本当に問うべきなのは、会社がその人を店長として育てているかどうかです。

店長に売上を求めるなら、売上の作り方を教えているでしょうか。
店長に人材育成を求めるなら、人を育てる時間を渡しているでしょうか。
店長にスタッフさんを守れと言うなら、守るための判断基準を渡しているでしょうか。
店長に責任を負わせるなら、そのための権限を渡しているでしょうか。

責任だけ渡して、時間も権限も教育も渡さない。

それでは、店長は苦しくなります。

店長が悪いのではなく、店長が店長として動ける流れが整っていないのかもしれません。

そういう見方も、必要ではないでしょうか。

優秀な店長ほど、苦しくなる

実は、優秀な雇われ店長ほど苦しくなることがあります。

いわゆる「辞めてほしくない人から辞めていく」現実です。

なぜなら、見えてしまうからです。

このままでは店が育たない。
新人が定着しない。
できるスタッフさんに負荷が寄っている。
スタッフさんが疲れている。
現場の空気が悪くなっている。
でも会社は、そこに時間もお金もかけない。

そして優秀な店長は、自分の体力と善意で、その穴を埋めようとします。

自分が現場に入る。
自分がシフトを埋める。
自分がクレームを受ける。
自分が新人を見て、自分が売上も見る。

その結果、一見すると店は回ります。

でも、それは仕組みが機能しているのではなく、店長が無理をして支えているだけかもしれません。

優秀な店長が頑張るほど、会社の仕組みの不足が見えにくくなる。

ここは、一度そっと見直してみてもいいのではないでしょうか。

店が回っているから大丈夫。

本当にそうでしょうか。

もしかすると、誰かの無理で、なんとか回っているだけかもしれません。

理念は、現場で使えなければ意味がない

店長が判断できない理由は、能力不足だけではありません。

会社の理念が、現場で使える判断基準になっていないこともあります。

理念は、ポスターに書く言葉ではありません。
採用ページに載せるための飾りでもありません。
社長のきれいごとでもありません。

理念とは、社長がいない場所で、店長が迷ったときに立ち返る判断基準です。

売上を取るのか。
スタッフさんを守るのか。
お客様にどこまで応えるのか。
理不尽な要求にどう線を引くのか。
人件費を削るのか、人を育てるのか。

そういう迷う場面で、会社として何を大切にするのか。

それが理念です。

そして理念は、社長を守る盾でもあります。

売上が欲しい。
人が足りない。
お客様に怒られたくない。
社員に辞められたくない。

そんな苦しい場面でも、

「うちは、それはしない」
「うちは、スタッフさんを差し出してまで売上を取らない」
「うちは、お客様にもスタッフさんにも誠実である」

と言えるための盾です。

理念が現場で使える言葉になっていなければ、店長は迷います。
迷った店長は、結局、上司の顔色を見るようになります。

それでは、現場は育ちません。

理念は、掲げるものではなく、現場で使えるように整えるもの。

ここが抜けると、想いは現場まで届きにくくなります。

店長が迷ったとき、戻れる場所が会社の中にあるかどうかで、その店の未来は大きく変わります。

経営者のみなさん。
店長さんは、あなたに相談できますか。

経営陣に問いたいこと

ここまで、店長の仕事について書いてきました。

ただ、ここで終わらせてしまうと、少し違うと思っています。

店長が店長らしい仕事をできていない。
人を育てられていない。
売上を見る視点が弱い。
スタッフさんを守る判断ができない。
本部やマネージャー、社長の方針を現場に翻訳できない。

そう見える場面は、たしかにあります。

でも、それを店長個人の能力不足だけで片づけてよいのでしょうか。

私は、そうは思いません。

むしろ本当に問われるべきなのは、経営陣の側かもしれません。

ところで、経営者のみなさん。

肩書きだけの店長を、量産していませんか。

現場作業ができるから。
長く働いているから。
シフトを組めるから。
クレーム対応ができるから。
人手が足りないから。
とりあえず誰かを責任者にしなければならないから。

そんな理由で、店長という肩書を渡していないでしょうか。

もちろん、現場経験は大切です。
作業ができることも大切です。
スタッフさんから信頼されていることも大切です。

でも、それだけで店長にしてしまうと、その人は「店長」ではなく、少し責任の重いバイトリーダーにしているだけかもしれません。

店長という肩書を渡すなら、会社はその人に何を渡しているでしょうか。

売上を作るための考え方を渡しているでしょうか。
人を育てるための時間を渡しているでしょうか。
スタッフさんを守るための判断基準を渡しているでしょうか。
現場で優先順位を決めるための権限を渡しているでしょうか。
会社の理念を、自分の言葉で語れるように教育しているでしょうか。

責任だけ渡して、時間も権限も教育も渡さない。

それでは、店長は苦しくなります。

店長に「売上を上げろ」と言う。
でも、売上の作り方は教えない。

店長に「人を育てろ」と言う。
でも、育成の時間は与えない。

店長に「スタッフさんを守れ」と言う。
でも、理不尽なお客様対応で店長を守らない。

店長に「現場を任せる」と言う。
でも、判断する権限は渡さない。

店長に「理念を大切にしろ」と言う。
でも、その理念は現場でどう使うのか説明しない。

これでは、店長は育ちません。

店長が育たない会社では、現場も育ちません。

そして現場が育たない会社では、優秀な店長ほど苦しくなります。

なぜなら、優秀な店長は気づいてしまうからです。

このままでは、店が育たない。
新人が定着しない。
できるスタッフさんに負荷が寄っている。
スタッフさんが疲れている。
お客様対応が場当たりになっている。
でも会社は、そこに時間もお金もかけない。

そして、その穴を自分の体力と善意で埋めようとしてしまいます。

一見すると、店は回ります。

でも、それは組織が機能しているのではありません。
店長個人が無理をして、組織の不足を肩代わりしているだけかもしれません。

経営陣に、一つお聞きしておきたいことがあります。

御社では、店長の仕事を定義していますか。

店長とバイトリーダーの違いを、店長本人が説明できますか。

マネージャーは、店長を育てる人になっていますか。
それとも、数字を確認して、本部や社長の指示を伝える人になっていますか。

店長会議は、会社の判断基準を共有する場ですか。
それとも、業績報告と吊るし上げの場ですか。

店長に売上と人材育成を求めるなら、そのための時間、権限、教育を渡していますか。

店長がスタッフさんを守る判断をしたとき、会社はその店長を守りますか。

そして、もう一つ。

店長が店長として育っていない現実を、店長本人の責任だけにしていませんか。

店長を責めるのは簡単です。

でも、店長を店長にしていない会社もあります。

肩書きだけを渡して、役割を渡さない。
責任だけを渡して、権限を渡さない。
数字だけを求めて、育成の時間を渡さない。
理念を掲げているのに、現場で使える判断基準にしていない。

それでは、店長は育ちません。

店長を育てることは、経営の仕事です。

店長が店長として判断できるように、言葉を渡すこと。
時間を渡すこと。
権限を渡すこと。
教育を渡すこと。
そして、苦しい判断をした店長を会社が守ること。

それができて初めて、店長は店長になります。

店長が変われば、現場は変わります。
でも、店長が変わるためには、まず経営者が店長を“ひとりにしないこと”が必要です。

経営者のみなさん。
店長さんを、ひとりにしていませんか。

店長に責任を求める前に、まず会社として問うべきことがあります。

あなたの会社は、店長を“店長”にしていますか。
それとも、肩書きだけの店長を量産していませんか。

店長とは、店を回す人ではない

店長を責めるのは簡単です。

「あの店長は分かっていない」
「あの店長は現場しか見ていない」
「あの店長は人を育てられない」

そう言うのは簡単です。

でも、もしかすると、その人は店長の仕事を教わらないまま、店長にされているのかもしれません。

現場作業ができるから。
長く働いているから。
シフトを組めるから。
クレーム対応ができるから。

それだけで店長にしてしまえば、店長はバイトリーダーの延長で止まってしまうことがあります。

店長とは、店を回す人ではありません。

店長とは、売上と人が育つ現場を作る人です。

そして経営陣の仕事は、店長に責任を押しつけることではありません。

店長が店長として判断できるように、言葉を渡すこと。
時間を渡すこと。
権限を渡すこと。
教育を渡すこと。

それが、経営陣の仕事です。

店長さん、あなたはバイトリーダーですか。

もし、この問いに少しでも胸が痛むなら、そこから始めればいいと思います。

自分を責める必要はありません。
ただ、少し見る場所を変えてみる。

自分は現場を回しているだけなのか。
それとも、人と売上が育つ流れを整えているのか。

一度、そっと見直してみてもいいのではないでしょうか。

そして経営者の方には、もう一つ問いを置きたいと思います。

あなたの会社は、店長を“店長”にしていますか。
それとも、便利なバイトリーダーにしていませんか。

店長を育てることは、現場任せにしてよいことではありません。

売るためだけではなく、迷わせないために。
押すためではなく、安心して進んでもらうために。
店長が店長として立てる流れを、丁寧に整えていく。

その小さな想いの積み重ねが、現場を少しずつ育てていくのだと思います。