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社長は質問で変わる 第3話

―社長は質問で変わる― ある美容サロンが再び成長を始めた2年間 ―

第3話
美容業界という迷路

美容業界は、
外から見ると華やかだ。


――そう思っていた。

おしゃれな店内。
笑顔のスタッフ。
きれいになって帰るお客様。


SNSには
満席の予約表。

「売上○○万円達成」

そんな投稿も並ぶ。

でも――
現場にいる人なら知っている。

その裏側を。

スタッフが辞める。

新人が育たない。

売上はあるのに
利益が残らない。


忙しいのに、
なぜか余裕がない。


多くのサロンオーナーが
同じ悩みを抱えている。


瑞希も
同じだった。


店舗は三つ。

スタッフもいる。

売上も伸びている。

それなのに――


どこか不安が消えない。


ある日の

地元サロンオーナーたちの集まるランチ会

何気ない会話の中で
1人が言った。


「またスタッフ辞めましてね」


瑞希は思わず聞いた。


「何人目ですか?」

「今年で三人目です」


そのサロンは
人気店だった。


予約も埋まっている。
売上もある。


それでも――


人が続かない。


別のオーナーも言った。


「店長が育たないんですよね」

「任せたいんですけどね」

「結局、自分が全部見ちゃう」


以前の自分なら、


「大変ですよね」

そう言っていたと思う。


でも――


その日の瑞希は
うまく言葉が出なかった。


その会話が、

ただの愚痴には聞こえなかった。


自分たちの足元が、
少しずつ崩れていく音。


そんなふうに聞こえた。


箸が止まる。


料理の味がしない。


会話だけが、
やけに鮮明に頭に残る。


私だけじゃない・・・

多くのオーナーが、同じ迷路の中にいる。


スタッフ教育。
人間関係。
評価制度。


どれも大事だとわかっている。


でも――
どう作ればいいのかがわからない。


瑞希も、同じだった。


店舗は増えた。

スタッフもいる。


でも、組織ではない。


瑞希のサロンは、
まだ「個人経営の延長線」にあった。


売上が伸びても、
どこか不安が残る。


このまま拡大して大丈夫だろうか。

スタッフはついてくるだろうか。

会社として成長できるだろうか。


不安を消したくて、

瑞希は情報を集めた。


売上アップ。
最新技術。
SNS集客。
単価アップ。


セミナーにも行った。

動画も見た。

ノウハウも学んだ。


でも――


胸のつかえは、消えなかった。


「これじゃない」


どれだけ答えを集めても、


求めているものに
触れていない気がした。


美容業界には
たくさんの勉強会がある。


技術も学べる。

集客も学べる。


でも――


瑞希は思った。


「組織って、なんだろう」


言葉にはしている。


必要だとも思っている。


でも――


自分でも、その意味が分かっていない。


そのことに気づいたとき、

少しだけ怖くなった。


多くのサロンは
こうして成長していく。


技術を磨く。

お客様が増える。

スタッフを雇う。

店舗を増やす。

ここまではいい。


でも――


その先がない。

だから
多くのサロンは

同じ場所で
迷い始める。


瑞希は思った。


美容業界は
迷路なのかもしれない。


そのとき。

あの言葉が、頭に浮かんだ。


「なぜ、融資が必要なんですか?」


あのときは
答えられなかった。


でも今なら、わかる。


あれは、

お金の話じゃなかった。


「瑞希さん、どこに向かっているんですか?」


そう聞かれていたのかもしれない。


瑞希はスマートフォンを手に取った。


少しだけ迷う。

画面を見つめる。


そして、

メッセージを打ち始めた。


次回
第4話
答えを教えないコンサル

➡ 第2話:順調だったはずのサロンに起きた違和感を読む

➡ 第1話:なぜ、融資が必要なんですか?(すべての始まりを振り返る)