1,事業資金調達について、金融機関の融資対応が変化する「アクションプラン」?!
【令和2年度第3次補正予算案の事業概要(PR資料)】にあるように、「新しい信用保証制度」の創設が、ウィズコロナ・アフターコロナの時代にあっては、金融機関の融資の対応を変化させるきっかけになるかもしれません。
1)なぜ融資対応が変わるのか?
政策金融公庫を含め、金融機関が融資の際に最も重視する点は「返済可能性」です。
「返済可能性」が低い企業に対しては、金融機関は融資をしようとはしません。「返済できる」根拠を示さないことには、金融機関を納得させることができないのです。
従来は、融資を申請する側が金融機関を納得させる為に「口頭」で、「どのように取り組むことで売上や収益を上げるのか」という「アクションプラン」を説明していたのですが、今後はそれだけでは足りなくなるということです。
新しい信用保証制度の申請要件のひとつに、
「今後取り組む事項(アクションプラン)を作成すること」
とあるからです。
金融機関に根拠を示すことができます。
「申請要件」にあがっている以上、「口頭」で済ませるわけにはいきませんね。
事業計画を書類として作成して、経営者であるあなたが、その「アクションプラン」に基づいて、金融機関を説得する必要があります。
2)金融機関を納得させる「アクションプラン」とは
「返済できる根拠」=「収支改善計画」ですから、そこに盛り込むべきものは次のような観点から考えてみましょう。
●新規顧客獲得策
●リピート率強化策
●客単価向上策
●経費削減策
●原材料費削減策
当事務所が得意としている「飲食店」を例に考えてみます。
①新規顧客獲得策
売上を上げる方法は、「来客数」を増やすこと、「客単価」を上げることの2つです。
コロナ禍において、飲食店にとって、「新規顧客」の開拓は厳しい状況にあるかもしれません。
が、だからといって何もしないわけにはいきません。金融機関からの融資を取り付ける為にも、チャレンジは必要です。
新規顧客獲得の為にできることを考えてみると・・・
●来店販促用チラシや割引クーポンの配布
●SNSを利用した情報発信
●地域に根ざしたフリーペーパー等への広告
●プレリリースを利用して、新聞・雑誌からの取材を受ける。
●ぐるなび・食べログ等に代表される、ポータルサイト・口コミサイトへの登録
コストのかかるも、時間のかかるものとありますが、それぞれ、できるだけ具体的にアクションプランに落とし込んでいきます。
実現性の高いアクションプランを提示することで、金融機関を納得させることが可能となります。
②リピート率の強化
「客数を増やす」と言うと、どうしても「新規」開拓を思い浮かべてしまいがちですが、既にお店のファンになっていただいているお客様の来店頻度を上げることができれば、「客数は増えます」ね。
そもそも、新規顧客の開拓にはお金も時間も労力もかかるものです(新規開拓には、既存顧客5倍のコストがかかるとも言われています)。
まずは、あなたのお店のファンの方に、月1回のところ2回、3回と足を運んでいただけるような取組を考えてみませんか?
あなたのお店のファンである皆様に、より多くご来店いただくためにできること。
●接客力の強化
●季節のメニューの開発
●ポイントカードの導入
●名刺をいただいた顧客にDM送付
●LINE公式アカウントへの登録→クーポンの配布
いかがですか?現実問題として、既存のお客様のリピート率は正直言って「下降線」だと思います。だからこそ、「1人1人」のお客様にお時間をかけることができるのではないでしょうか?
「密」は避けなければいけませんが、「あちらの方、よく見かけるな」と言うお客様には、アプローチをかける大チャンスです。
アフターコロナでは、あなたのお店の大ファンになっているに違いありません。
③客単価向上への取組
飲食店における売上の法則は、「客数×客単価」でしたね。
客数を増やすと同時に、ご来店いただいたお客様に1皿でも1杯でも多く楽しんでいただく為にできることを考えてみましょう。
「値上げは・・・」と言う経営者の方もいらっしゃるかと思いますが、値上げをすることだけが、客単価を上げる方法ではありません。
「繁盛店を目指して、客単価を上げる為に」参照
「お客様が注文しやすいメニュー」「注文したくなるメニュー」を考えてみてください。
ここでは、「メニュー構成」について例を挙げてみます
●「季節のメニュー」の投入
●顧客へ声をかけることで「ドリンク追加注文」の誘導
●「ご一緒に◯◯はいかがですか」(マクドナルド方式)
●サイズアップメニュー・セットメニューの投入
●2段階・3段階の上位価格の商品を作る
(「スタンダード」と「プレミヤ」の2段階、「スモール」「ミドル」「ラージ」の3段階など。
④経費削減対策
売上向上の為の取組と並行して行いたいのは、「経費削減対策」です。
お店には「規模」というものがあります。
収容人数の制限がある以上、青天井に来客数を増やすことはできません。
また、多すぎる来客数もお客様にストレスを与えてまいます。
売上を伸ばすことができないであれば、無駄なコストは省くべきですね。
「支出を減らす方法」を考えるのが「経費削減対策」です。これも実践することで、「利益」の確保ができます。
どんなものがあるのか見ていきましょう。
多くの店舗・企業にとって一番大きな経費は「人件費」ですが、人件費を削減する優秀な人材が辞めてしまったり、従業員のモチベーションが下がったり、と経費削減をすることで、大事なものを失ってしまう恐れがあるので、「人件費」の削減には安易に手を付けるのは考えものです。
経費の削減は、以下のようなものを考えてみましょう。
●家賃交渉による家賃の削減
●電力会社・省エネ機器・電力契約容量の見直しによる水道光熱費
●保険・リース契約の見直し
●「セルフオーダーシステム」「券売機」等のシステム導入による
●販促方法の見直しによる広告宣伝費の削減
⑤原材料費削減対策
固定費の削減は上手に行うと効果も高いです。さらにもう一歩踏み込んで「変動費」の削減も考えてみましょう。
飲食店における「変動費」は主に仕入にかかる原材料費です。これと、アルバイトさん達の「人件費」。ただし、「人件費」の削減は正規社員であっても、パート、アルバイトさんであっても、安易に手を付けるべきではありません。
現在料費削減の為には、
●原材料率が低いメニューの開発
●共有食材の利用による新メニュー開発で、ロス率を低減させる
●仕入れ業者の見直しによる原材料費の削減
●メニューの絞り込みによるロス率の低減
●仕入れ業者との価格交渉による原材料費の削減
これらのことを、口頭ではなく「文書」にすることで、今後の事業展開を金融機関に説明をして、「返済できる根拠」を示ししていきます。
2)アクションプランを提出する際の注意点
1)で準備した「収支改善案」を「アクションプラン」として金融機関へ提出するのですが、注意しておきたいことがあります。
①改善策の1つ1つに、具体的なスケジュールを持たせる。
時間を掛けて綿密に作り上げた「収支改善策」を、項目の羅列で終わらせてはいけません。これらには、「スケジュール」をつけるを付けて、実行への契機としておきましょう。
「来店促進用チラシや割引クーポンの配布」「ポイントカードの導
「客単価の高い「季節のメニュー」の投入」「家賃交渉による家賃
「仕入れ業者の見直しによる原材料費の削減」といった改善策を羅
それが本当に実現できるかどうか金融機関は判断できません。
それぞれの改善策を「いつ」「どのように」「どんなスケジュール
「それなら、実際にできそうだな。」「これ位やれば、売上も伸びるかな」と感じてもらうことが大切です。
例えば「来店促進用チラシや割引クーポンの配布」を行う場合、
・4/1 印刷業者・配布業者の選定
・4/3 印刷業者・配布業者との打合せ
・4/10 チラシのデザインアップ
・4/15 チラシのデザインの最終決定→印刷
・4/18 ○○区T町(2000部)にチラシ配布(1回目)
・4/21 ○○区E町(1500部)にチラシ配布(1回目)
・4/24 ○○区S町(1500部)にチラシ配布(1回目)
・4/27 ○○区T町(2000部)にチラシ配布(2回目)
・5/ 2 ○○区E町(1500部)にチラシ配布(2回目)
・5/ 5 ○○区S町(1500部)にチラシ配布(2回目)
と言った具合に、いつ、どこで、何をどのように、と決めることで、「実現可能性がたかい」プランであると認識してもらいます。
また、これによって、経営者である「あなたの本気度」が伝わります。
②「数字」で明確に示す
何度も良いますが金融機関が最も注目するのは、融資したお金が返ってくるのか、どこから、どのように返済してもらえるのか?
毎月の返済額が3万円になるような融資であれば、その「3万円」はどこからやってくるのを知りたい、これが金融機関の側の当然の心理です。
そこで「収支改善案」を実行することで、「どれぐらいの収支改善=結果が得られるか」を「数字」で提示する必要があります。
そのために、「収支改善案を実行しない場合の収支計画書」と「収支改善案を実行した場合の収支計画書」の2種類を作成しまし
こうすることで、収支改善計画を実行した場合の効果を強く訴えることができます。
ここまで具体的に「収支改善案」を金融機関に提示する企業様はまだまだ少ないと思います。
だからこそ、効果的だとも言えますし、アフターコロナとなる今後はこれが「スタンダード」な時代になるかもしれません。