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社長は質問で変わる

―社長は質問で変わる― ある美容サロンが再び成長を始めた2年間 ―

第1話
なぜ、融資が必要なんですか?

売上はある。
店舗も増えた。
それなのに、なぜか不安が消えない。

美容サロン経営には、
ある「壁」がある。

それは、三店舗目だ。

一店舗のときは、
社長の目が届く。

二店舗になっても、
まだなんとかなる。

でも三店舗になると、
何かが変わり始める。

スタッフは増える。
売上も伸びる。
忙しさも増える。

それなのに、
なぜか不安が消えない。

このままでいいのだろうか。

そんな違和感を感じ始める経営者は、
実は少なくない。

これは、
そんな一人のサロンオーナーの話だ。

その日、
ある経営者の集まりに参加していた。

経営者同士がテーブルを囲み、
ゆるやかな空気で会話をしている。

売上の話。
採用の話。
最近の景気の話。

テーブルの上には名刺が並び、
グラスの氷が小さく音を立てていた。

決まったテーマはない。
経営者同士の、
何気ない雑談の時間だった。

その日の瑞希は、少し考え込んでいた。

瑞希は都内で美容サロンを三店舗経営している。

会社は順調だ。
店舗は三つ。
スタッフも増えた。
売上も、順調に伸びている。

美容サロンとして見れば、
うまくいっている方だと思う。

それでも、
なぜか心の奥が落ち着かなかった。

このまま進んでいいのだろうか。

そんなことを考えていると、
会話の流れが瑞希の方に向いた。

「最近どうですか?」

軽い質問だった。

経営者同士なら、
よくある会話だ。

瑞希は少し迷ったあと、
思ったことをそのまま口にした。

「融資を受けたいんです」

その瞬間、
テーブルの空気がほんの少しだけ変わった。

経営者同士の会話では
珍しい話ではない。
むしろ自然な話題だった。

事業を伸ばすには、
資金が必要になる。

店舗を増やす。
設備を整える。
広告を出す。
人を雇う。

どれもお金がかかる。

美容サロンを経営していれば、
資金の話は避けて通れない。

だからこの相談自体は、
特別なものではなかった。

周りの経営者たちも、うなずいていた。

「銀行ですか?」
「補助金とかありますよ」
「事業計画作ってます?」

そんな言葉が、
テーブルの上を行き交う。

そのときだった。

向かいに座っていた男性が、
静かに口を開いた。

「一つ聞いてもいいですか?」

瑞希はうなずいた。

男性は、少しだけ首をかしげながら言った。

「なぜ、融資が必要なんですか?」

一瞬、言葉が止まった。

「えっと……」

もちろん理由はある。

店舗を増やしたい。
設備を整えたい。
広告も出したい。
スタッフの環境も整えたい。

頭の中には、
いくつも理由が浮かぶ。

でも、それがうまく言葉にならない。

考えてみれば、
「なぜ」と聞かれたことはなかった。

融資が必要なのは当然だと
思っていたからだ。

男性は続けた。

「融資を受けて、そのあと会社はどうなりますか?」

瑞希は黙った。

周りの会話も、少し静かになる。

融資を受ける。
資金が入る。

でも――

その先は?

会社はどうなる?
スタッフはどうなる?
自分は、何を目指している?

答えが出ない。

なぜなら、
そこまで考えたことがなかったからだ。

店舗を増やす。
売上を伸ばす。
会社を大きくする。

それは目標だった。

でも、
その先の会社の姿は
思い描けていなかった。

瑞希は少し困ったように笑った。

「……そこまで、考えていませんでした」

男性は、
特に何かを説明するわけでもなかった。

アドバイスもしない。

ただ、静かにうなずいた。

「そうですか」

それだけだった。

会話はまた、別の話題に移っていく。

売上の話。
採用の話。
業界の話。

でも瑞希の頭の中では、
さっきの質問がずっと残っていた。

なぜ、融資が必要なんですか?

なぜ――

その言葉が、
頭の中で何度も繰り返される。

そのとき瑞希は、
初めて気づいた。

自分は
お金の相談をしているつもりだった。

でも本当は違う。

悩んでいたのは、
資金のことではない。

会社の未来。
スタッフとの関係。
組織の作り方。

そして――

経営者としての自分。

そのすべてが、
どこか曖昧なままだった。

なぜ、融資が必要なんですか?

その質問は、
瑞希の頭の中に残り続けていた。

そして数ヶ月後、
その問いがサロンの経営を
大きく変えることになる。

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どうやって集める? 資金調達方法まとめ


次回 第2話 順調だったはずのサロン

三店舗目を出したころから、
サロンの中で
少しずつ違和感が生まれ始めていた。

「言ったはずなのに」

その言葉が増えていく。

美容サロン経営者が
必ずぶつかる
**「三店舗の壁」**の話。